サブタイプなしのサブクラス

節 3.2 でみてきたように、(サブクラスからの)サブタイプの the partial decoupling により subsumption の機会を増やすことができる。

• もう一つのアプローチは、サブタイプとサブクラスをより区別した継承の可能性 を増すことである。このアプローチでは、「サブクラスはサブタイピングを意味する」 (性質(4))を放棄する。inheritance-is-not-subtyping [52] として知られている。

• これにより、 Self を引数ポジションに置くメソッドの継承 を許すことができる。これらの継承における柔軟性の増加により、subsumption における柔軟性を減少させることになる。 Self を contravariant ポジションに 自由に置くことにより、サブクラスはサブタイプを誘発する必要がない。

• 2 つのタイプ Max と MinMax を考える。 ObjectType Max is
    var n:Integer;
    method max(other:Max):Max;
  end;
  ObjectType MinMax is
    var n:Integer;
    method max(other:MinMax):MinMax;
    method min(other:MinMax):MinMax;
  end;
  また、以下の 2 つのクラスを考える。 class maxClass is
    var n:Integer:=0;
    method max(other: Self): Self is
      if self then
        return self
      else return other end;
    end;
  end;
  subclass minMaxClass of maxClass is
    method min(other: Self): Self is
      if self then
        return self
      else return other end;
    end;
  end;
  メソッド min と max は binary といわれる。それぞれが 2 つの値( selfと other)について演算するからである。 other は タイプ Self の contravariance ポジション である。 メソッド max は、クラス maxClass から minMaxClass に継承される。

• 直感的には、$Max$ は、$maxClass$ に一致し、$MinMax$ は $minMaxClass$ に一致する。より正確に一致させるためには Self の出現を含んだ クラスのための $ObjectTypeOf$ の意味を定義しなければならない。 結果として $ObjectTypeOf(maxClass)=Max$、 $ObjectTypeOf(minMaxClass)=MinMax$ を得る。この等式を成立させるためには、 オブジェクトタイプの中の再帰定義に対して クラスの中の Self の使用をマップする。継承されたメソッドのための Self を specialize を意味する。

• 例えば、継承されたメソッド $max$ の中の Self を $MinMax$ に 対応させる。そして $minMaxClass$ のインスタンスは タイプ $MinMax$ を 持つことになる。簡単には、$maxClass$ のインスタンスが タイプ $Max$ を 持ち、$minMaxClass$ のインスタンスが $MinMax$ を持つようにする。

• $minMaxClass$ クラスは $maxClass$ のサブクラスであるが、 $MinMax$ は $Max$ のサブタイプにすることはできない。以下のクラスを考える。 subclass minMaxClass' of minMaxClass is
    override max(other: Self): Self is
      if other.min( self)=other then
        return self
      else return other end;
    end;
  end;
  $minMaxClass'$ のインスタンスを $mm'$ とし、$mm':MinMax$ となる。

• もし $MinMax$ が $Max$ のサブタイプだとすれば、$mm':Max$ とすることができ、タイプ $Max$ の任意の $m$ に対して $mm'.max(m)$ とすることができる。$m$ が $min$ attribute をもっていないかも しれないので、$mm'$ の $max$ メソッドの override は break するかもしれない。

• よって、$MinMax<:Max$ は成立しない。このように、 Self の contravariant ポジションでの出現を持ったサブクラスは、サブタイプを 含むとは限らない。