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以下の命題を考えよう.

「太郎は,人間である.」かつ「人間は,空を飛べない」 ならば,「太郎は,空を飛べない」

このように,「 」で囲まれた一つ一つを 命題 という.実は,この文章 全体も一つの命題である.ここで,使われているように,論理学では 各演算に対して,以下の記号を使う.

演算 意味 記号
かつ 論理積,連言 AND, /\, ∩
または 論理和,選言 OR, \/, ∪
~でない 否定 NOT, ~,¬
~ならば~ 含意 ⇒, ⊃
同等 同等

上の他に,口語ではあまり使わないが,XOR(排他的論理和) もある. 「ならば」を表現する ⊃ は,集合論で用いる「包含関係」とは無関係で あることに注意しよう.

正確には,論理学は,上のような「太郎」,「人間」といった 具体的な,「値」を代入して扱うのが目的ではなく, それらを変数 (P,Q や,X,Y など) におきかえてそれらの記号 を使った演算の体系を追求する学問(代数学)である. 無味乾燥した,記号 P,Q により表された命題に対して,実際に 「太郎」, 「人間」という値を代入することを解釈という.

「P ⊃ Q」 という命題は,「¬P ∪ Q」に等しいことが知られて いる.より具体的にそれらの関係を示すために,真理表を 定めてみよう(以下,「真」 を 「T」,「偽」を 「F」とする). ここで P,Q を変数とする.

P Q ¬P P ∩ Q P ∪ Q P ⊃ Q P XOR Q P ⇔ Q
T T F T T T F T
T F F F T F T F
F T T F T T T F
F F T F F T F T

実は,この表は,24=16 通りあることがわかる (4 通り((P が T,Q が T),(P が T,Q が F),(P が F,Q が T), (P が F,Q が F)) に対してそれぞれ,T,F になることがある) が, それら全てを使うことはない.ここでは,その 16 通り の内の, 5 通りを示したに過ぎない.

例えば,XOR(排他的論理和) は,2 度適用すると,元に戻る 論理演算として知られている.そのため,カーソルの表示の ときに用いられる.真理表を書いてみよう.

P Q P XOR Q (P XOR Q) XOR Q
T T F T
T F T T
F T T F
F F F F

これより (P XOR Q) XOR Q は,P に等しいことがわかる.

もうすこし,上の真理表を眺めてみよう.例えば, 以下の命題はどうであろうか.

((P ⊃ Q) ∩ (Q ⊃ R)) ⊃ (P ⊃ R)

早速,真理表を書いてみよう.

P Q R P ⊃ Q Q ⊃ R (P ⊃ Q) ∩ (Q ⊃ R) P ⊃ R ((P ⊃ Q) ∩ (Q ⊃ R)) ⊃ (P ⊃ R)
T T T T T T T T
T T F T F F F T
T F T F T F T T
T F F F T F F T
F T T T T T T T
F T F T F F T T
F F T T T T T T
F F F T T T T T

これにより,命題

((P ⊃ Q) ∩ (Q ⊃ R)) ⊃ (P ⊃ R)
は,変数 P,Q,R が「真」,「偽」のどちらであっても, 必ず 「真」になることがわかる.このような命題を 恒真式 または,トートロジー(以下,トートロジーという)という. トートロジーであれば,一見複雑にみえる命題でも,「常に」真になるので, 非常に重要であることがわかる.例えば,会話の中で, 相手の意見によらず,自分の意見に引き寄せるテクニックで使っている (「かつ」,「または」などの論理演算を駆使して)ということができるだろう.

また,命題

((P ⊃ Q) ∩ (Q ⊃ R)) ⊃ (P ⊃ R)
に解釈を与えて,「P ならば Q」かつ「Q ならば R」 ならば, 「P ならば R」 と読むことができる.つまり,最初与えた命題 と同様に解釈することができることがわかる. この命題は,「三段論法」といって,トートロジーであることが わかった.トートロジーであることがわかったらそれらの変数が 「真」,「偽」のどちらでも,常に結果が「真」であることが わかったので,常に成り立つ.

この論理では,このトートロジーが大きな役割をはたす.ここで説明した 論理を 命題論理 という.

課題

以下の式は,トートロジーかどうかを真理表を書いて調べよ. 解説
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Yasushi `yas' KODAMA
09/11/2000